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不老不死伝説のお一人(笑)
永遠の17歳☆ですね(笑)

何はともあれ、おめでとう!!!
私との年の差は開いていくけどね(笑)

以下は、月森君誕生日企画に応募した二次創作作品です。

いつも通り、無断転写は禁止です。
んでもって、出版社様及びに原作者様とは一切関係ございません。 

放課後の練習室で背筋を伸ばし、ヴァイオリンを構える。

『お高くとまってるんだよ、音楽科のエース様の演奏は。』

普通科のコンクール出場者に言われた言葉だ。

当てこすりにしては、ありふれている。
だが、どこかで気にしている自分がいるのも事実だ。


「くそっ」


こんな事を、ヴァイオリンを弾いている時に思い出すなんて。
貴重な練習時間を、注意力散漫のままで費やすわけにはいかないのに。

焦りは、そのまま音に現れる。

…駄目だ。集中できない。

この状態では、いくら練習しても無駄だ。

「…一息入れて、気分転換をした方がよさそうだ。」

ヴァイオリンをしまい、屋上へ続く階段を上がる。
今日は天気がいいから、きっと風が気持ちいいはずだ。少し風に当たって、頭を冷やそ
う。

そんな事を考えながら屋上のドアを開けると、音楽が溢れてきた。

「…日野?」

「あっ、月森君!」

屋上で練習をしていたのは、普通科からコンクールに参加していた日野香穂子だった。

日野はコンクールが終わった後も、ヴァイオリンを続けていた。
自宅では防音設備が無くて練習できないからと、学校で練習し、時々俺の所にわからない
事を聞きに来る。
俺も、もう競う必要もないから、答えられる質問にはきちんと答えるようにしている。

彼女が音楽を続けてくれている事がうれしい。

始めは、普通科の、それも素人が棚ぼたでコンクールに参加するなど、冗談ではない、と思っていた。

でも、彼女の努力している姿勢を間近で見て、自分が彼女に対してとった行動を恥ずかしく思った。

別に日野だって、遊んでいるわけではないのだ。

確かに魔法のヴァイオリンという、特殊な器具を使っていたが、彼女は決してその状態に甘んじる事がなかった。
日々、より良い演奏を求めて努力していた。
音楽科という立ち位置の上に胡座をかいて座って、コンクールに参加できない事に対して不満を言っていただけの生徒達よりも、よっぽど。

「今日は屋上で練習しているのか?」

「うん、天気がいいから、外の方が気持ち良さそうで。月森君は?」

「俺は…ちょっと気分転換に。」

そっかぁ、と屈託なく笑った彼女は、良かったと言った。

「…何が、良かったんだ?」

俺が尋ねると、彼女は

「ちょっと月森君に用事があったから、後で捜しに行こうと思ってたんだ。」

と、答えた。

「…何かわからない事でもあったのか?」

「ううん、そうじゃなくて。」

そんなにわからないって言ってるかなぁ、と苦笑しながら、日野はヴァイオリンを構え
た。

~♪

この曲は…

『HAPPY BIRTHDAY』。世界中で誕生日を祝う為に歌われている曲だ。

「…ひ、日野?」

「月森君、今日誕生日だったよね。」

お誕生日おめでとう、と微笑んで言う日野に、俺は呆気にとられた。

「な、何故君が知って…」

言った覚えはない。
それどころか、俺自身も一週間前に海外講演中の母からエアメールが届くまで忘れていた
のに。

「天羽さんが、一週間ぐらい前に教えてくれたんだよ。」

それに、音楽科の女の子達もそわそわしてたしね。
そう言って、日野は鞄をごそごそと漁って、小さな包みを取出した。

「はい、これよかったら貰って?」

大した物じゃないんだけど、日頃の感謝も込めて。
そう言って差し出された包みを、一瞬躊躇ったが、俺は受け取った。

下駄箱の中、机の上、ロッカーの中、鞄の中。
今日一日で、自分が気付かないうちに、あちこちにプレゼントが置かれていた。

正直、こういう行為はあまり好きではない。
面と向かって渡しに来る人の方が、まだ少しは好感がもてるが、何故親しいどころか、知
りもしない人から誕生日を祝われなくてはいけないんだ。

だから、直接渡しに来た人には断り、勝手に置かれていた物は返しに行き、名前が書かれ
ていなかった物は、落とし物として、職員室に届けた。

なのに、今、躊躇いはしたものの、あっさりと日野からのプレゼントを受け取ってしまっ
た自分がいる。

「ねぇ、開けてみて?」

日野がそう言うので、リボンを解き、水色の包装紙を破かないように、丁寧に包みを開け
た。

「これは…」

包みを解いた箱の中に入っていたのは、ト音記号がついたネクタイピンと、八分音譜がつ
いたカフスボタンのセットだった。

「月森君だったら、使う機会も多いかなって思ったから。よかったら使って?」

…どうしてだろう。
他の誰に言われても、煩わしいだけだった言葉なのに、彼女に言われたら素直にうれしい
と思った。

「あぁ、大切に使わせてもらう。…日野、ありがとう。」

どう致しまして。
そう言って、日野は更に言葉を繋げる。

「月森君の音はね、私の目標なんだ。
凜として、気高くて、半端じゃない練習量に裏付けられた自信と、プライドを持った演奏だよね。
私もあんな風に演奏するのが夢なんだ。」

自分の中のモヤモヤしたものが、晴れていく気がした。

『お高くとまっている』と、けなされた演奏が、彼女の手によって『凜として、気高い』ものに変わった。

俺は確かに日野に色々な事を教えているが、それ以上に多くの物を日野から学んでいる。

「日野、ありがとう。」

俺を見つけてくれて。

『浜井美紗の息子』でもなく、『月森家の跡取り』でもなく、もちろん『音楽科のサラブ
レッド』でもない、『月森蓮』という人間を見つけてくれて。

何のフィルターも通さずに、俺を見てくれてありがとう。

「君はこの後、何か用事はあるか?」

「ないよ。でも、なんで?」

「…その、よければお茶にでも付き合って欲しいんだが…」

どうせ今日は家に帰っても誰も家にいないし、プレゼントのお礼もしたいから。
そう言う俺に、彼女はニッコリと微笑んだ。

「喜んで。」

あ、でもちょっと待って!

ふと彼女は言った。

「行く前に、何か一曲合奏しよう?」

 

放課後の空に、2台のヴァイオリンの音色が吸い込まれて行く……

 

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女性
職業:
大学生
趣味:
漫画・アニメ鑑賞、手芸
自己紹介:
都内の大学に通う女子大生です。
乙女ゲーもどんとこい!な今日この頃。
日々落語の稽古とオタク業にいそしんでいます。
声優さんの話題も大好きです。
興味対象、及びに傾向
<漫画・ゲーム・小説等>
・彩雲国物語(李絳攸・碧珀明)
・金色のコルダ(月森蓮,衛藤桐也)
・図書館戦争及び有川浩作品
・ホイッスル!(三上亮・郭英士)
・銀魂(土方十四郎)
・戦国BASARA(伊達政宗,長宗我部元親)
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